株式会社ライナフ

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骨髄移植体験記その4

2018, 05/08

最終同意から1週間後、ついに入院となりました。
場所は毎度おなじみ、小田急線沿線の大学病院。
僕の家からは電車と徒歩で1時間程度の場所です。
交通費は、全額出ます。
入院手続きを済ませると、4人部屋に通されました。
手術は、翌日です。
入院自体が、人生初なので、ワクワクする部分もあったのですが、ベッドを割り当てると、あとは暇です。
だって、周りは皆さん、体調が悪くて入っているのに、僕は逆に、体調が絶好調だからドナーをやっているわけです。
はぁ、暇だ・・・と思っていたところ、女性の看護師さんが僕に声をかけてくださいました。
「もし、お暇なら、無菌ルームの見学をしてみますか?」
おぉ、ぜひぜひ。
無菌ルームという部屋について、金八先生を見てイメージがあった僕は、とても興味がわきました。
金八先生では、先生の息子さんが白血病になり、無菌室で語り合うシーンがあったからです。
その時の無菌室は、大きなビニール袋の中にベッドがあり、その中で、マスクと白衣、帽子を付けた状態で面談をするというシーンでした。
で、僕が連れていかれた無菌室は、まず、入り口で風を体中に当てられ、その後、帽子を白衣を付けるのですが、そこまで厳重でもなく、こんなものでいいのか?と拍子抜けしました。
しかし、それは誤解でした。
入室した先には、畳2畳くらいの広さの、透明なアクリルような箱が並んでおり、その中に子供たちがいました。
3方が透明アクリルで、1方には穴がたくさん空いた金属製の壁がありました。
箱の内側には電話機の受話器が取り付けられており、外側にも受話器がありました。
「この中が、本当の無菌室です。穴が開いている壁から、常に風が流れていて、空気が滞留していないようになっています。
この中にいる子のほとんどは、生まれつきの白血病で、ずーっと、この箱の中で暮らしています。
お母さんに抱きしめたもらった記憶もなく、親子の会話は電話機の受話器を通して行われます。
この子たちは全員、自分に合う骨髄ドナーの方が現れるのを、待っているのです。」
・・・え、この子たち、ずっとここで過ごしているの??
こんなに狭い箱の中で、ずっと暮らしているの??
そんな風に思っていたところ、女性の方が近づいてきました。
30代前半の、とてもお綺麗な方でした。
看護師さんと挨拶をすると、看護師さんが僕を、
「こちら、こんど骨髄を提供されるドナーの方です。」
と紹介をしてくださいました。
「あ、どうも。」
と会釈をする僕。
すると、女性の方は、僕の目を見てこう言うのです。
「この度は、ドナーになっていただきありがとうございます。
私の子供は、ちょうど先週、骨髄移植の手術を受けました。
骨髄液が届いたとき、家族一度、本当に涙を流しながら、『命が届いた!!』と喜びました。
それだけ、待ち望んでいたのです。
おかげ様で、子供の手術は無事に成功し、良い方向に進んでいます。
私たちは、お医者様から、ドナーの方が自分の命のリスクを冒してまで、骨髄を提供してくださっているということを、聞いているのですが、
自分の子供に骨髄を提供してくれたその方には、直接お会いできない決まりになっています。
でも、心からお礼が言いたいのです。
あなたが提供された骨髄を受け取った患者さんの家族に代わり、私からお礼を言わせてください。
本当に、ありがとうございます。」
そして、両手で握手しました。
これまで、何となく「良いことをしている」と思ってやってきたことが、ここに来て、一気に実感がわき、
おぉぉ、本当に僕は、人の命を助けるのかぁ!!!
と、とても嬉しくなったのを覚えています。
僕の人生、後にも先にも、これほどまでに(お綺麗な)人から感謝されたことは、無い気がします。
心を温かくしつつ、一方で、箱の中にいる子供たちを思い出しつつ、初めて病院のベットで眠りにおちた、入院1日目でした。(つづく)