ちゃんと土俵際までいかないと、身につかないものがある
先日、とあるベンチャーキャピタル(以下、VC)の方とお話をしていたときの会話です。
そのVCは、銀行系のVCでして、キャピタリストの方々も銀行からの出向の方が多いです。
で、資金繰りの話になったときに、彼らは「やはり、常に資金面では余裕をもっておいてもらいたい。事業がうまく行かない場合もあるし、ギリギリになってからの調達だと足元を見られるし、焦ることになるので、少しでも手元資金が少なくなってきたと思ったら、次の資金調達に動いてほしい。」と言うのです。
言い換えると、「資金は常に、たぽたぽに余裕をもっておいてほしい。」ということです。
会社の安定経営という意味ではあっています。
さらに、銀行的な発想で考えると、投資先の企業の倒産なんて絶対に絶対にさせてはいけないため、常に多めの現預金を持っておいて欲しいという気持ちもわかります。
しかし、です。
我々はベンチャー企業なのです。
ベンチャーだから安定が不要という意味でもないし、ベンチャーだから倒産させていいなんてことでも断じてありません。
ベンチャーなので、もっと会社経営を学ぶ必要があるという意味です。
そして、その学びの機会をたぽたぽの余剰資金は奪ってしまうという意味です。
人は、自分がその場面に遭遇しない限り、心からの理解や学びは得られません。
一度も結婚をしたことのない人は結婚を自分のこととして語れないですし、子供を持つことも同じです。
倒産するとどんなことが起きてどんな気持ちになるのかも、倒産した人じゃないとわからないですし、社長をやったことのない人に社長の気持ちは最後までわかりません。
それと同様に、たぽたぽの余剰資金がある状態では、お金に余裕がありすぎるため、正しい資金繰りの考え方や、ビジネスにおいて前金で受け取る大事さが理解できません。
つまり、キャッシュフローを意識する経営にとって、とてつもなく大事なことをいつまでも学べなくなってしまうのです。
手元のお金が残り少なくなってはじめて、資金繰りと向き合うことができます。
土俵際までいかないと、学べないことがあるのです。
余剰に手元資金を持たせようとするVCは、そのベンチャーの貴重な機会を奪っているということです。
そんな話をワインを飲みながら熱弁したところ、「じゃあ、僕らはどうすればよいのですか。」と聞かれたので、
「土俵際まではただ見ているだけ、アドバイスするだけにとどめてください。そして、本当に土俵の外に出てしまいそうなときに、さっと後ろで背中を支えてあげてください。それが一番かっこいいVCの在り方だと思います。」
と答えました。
我ながら、かっこいいアドバイスだと思いました(自画自賛で終わります)。