撤退の難しさ
孫正義の有名な言葉に、「撤退が下手なやつはケチ」というのがあります。
本当にそれはその通りで、事業がうまく行かない、となったときに、その原因を排除するすべが見つからないまま、ずるずると事業を続けるのは、本当に危ない。
人は、何かしらコストをかけたものに対して、やめることができなくなる習性があります。
それを、「サンクコスト」と言います。
例えば、
・もう1万円かけたんだから、追加で5千円かけてうまく行くなら、やってみよう。
・片道2時間かけてここまで来たのだから、この土地じゃないと食べれないものを食べよう。
・せっかく、ここまで時間をかけて開発したのだから、この開発結果を何かに使わないともったいない。良い活用方法はないだろうか?
といった心理です。
上記3つの例でいうと、冷静には、
・5千円かけて得られるメリットが、5千円以上の価値があるかを考える。(1万円は忘れる。)
・その場所で本当に食べたいものがあるかを考える。(片道2時間は忘れる。)
・本当に顧客が求めているものは何か?を考える。(開発結果を忘れる。)
が、本当は、正しい判断基準なのですが、それを見失ってしまうのが、サンクコストです。
自分がいろいろなことを考え、判断をしているときに、「あ、サンクコストに捕らわれているな。」と意識することは大事だと思っています。
一方で、経営者がサンクコストを考えずに、「今までやっていたこれはすっぱりと忘れて、これをやる!」と言ったときに、これまでコツコツと積み上げてきたものを無視されることは、働いている現場の人にとっては、とてもモチベーションが下がります。
そのため、サンクコストに捕らわれてはいけないものの、それを積み上げてきた人たちへの説明責任を果たさないと、結果的には誰もついてこなくなる、という事態になります。
だから、撤退というのは難しく、安易に新規事業を始めてはいけないのです。
自戒をこめて。