骨髄移植体験記その5
入院2日目。
朝、起きて顔を洗って。
天気が良いです。
絶好の手術日よりです。
生きて帰れるといいな!
なんて思ったりしながら、手術を待ちます。
骨髄移植の手術は、腰のあたりに2本の、お箸くらいの太さの針を骨髄に刺します。
一度、刺した場所からは少量の骨髄液しか取れないため、皮膚に刺した穴はそのままに、抜くことはなく、角度を変えながら骨髄に100か所以上の穴をあけながら骨髄液をとります。
シェークを飲むときとか、フタにストローを指した後、角度を変えながら飲むと思いますが、あれみたいなものです。
当然起きていたら激痛で耐えられるわけもなく、手術は、全身麻酔で寝ている間に終わります。
ですが、この寝ている間、というのが気になりまして、どうやって寝るのか?と医師に聞いたところ、睡眠ガスを吸うと5秒で寝るそうです。
え?5秒で寝る?
絶対に起きているぞ!!と思って、強い意志を持っていても、ガスを吸ったら5秒で寝る?!
そんな、マンガの中みたいな世界があるのか!!
ハンカチで口をふさいだら寝ちゃう、みたいな!!
ここはもう、ガスと戦うしかない!
睡眠ガスを吸わされて、30秒たっても起きていて、医師から「起きていますかー?起きていたら手を上げてください―。」という意識確認をされても、ずっと手を上げて、医師から「な、なんて強靭な意思だ!こんなに起きていた患者は初めてだ!!」と言わせたい!!
だって、こちとら他の患者さんと違って、絶好調に健康な人間ですから!
と、睡眠ガスと戦うことを昨夜のうちに決心していた僕は、キリリ( `ー´)ノとした顔で看護師さんが来るのを待ちました。
午前10時頃、看護師さんが来て、僕をベッドから、手術室に移動するための移動台の上に移しました。
あの、よくテレビで「急患です!」ってやっているような、ガラガラと移動するやつです。
手術室に入ること自体、人生はじめてなので、ここから始まる初体験&睡眠ガスとの勝負に、僕はドキドキしました。
手術室に行く前に、看護師さんから導入剤と呼ばれる注射を打たれました。
なんでも、睡眠ガスを聞きやすくするための、注射だそうです。
「注射のあとは、ちょっとボーっとしますからねー。」と言われました。
左腕の筋肉に注射を打たれ、ものすごく痛かったです。
・・・・・・・・
目が覚めたら、夕日が沈む窓際のベッドの上で、寝てました。
あれ?
手術室は?
睡眠ガスは???
手術室への移動は?ガラガラは??
時刻は夕方16時。
そうです。
僕は、導入剤を打たれたあと、速攻、寝落ちてしまい、寝ている間に手術室へ運ばれ、寝ている状態で睡眠ガスを吸い、寝ている状態で手術が終わって、病室に帰ってきていたのです・・・・。
なんたる、不戦敗・・・。
こうして、僕の骨髄移植の手術は、記憶がないまま終わりました。(つづく)